「しじみって、どんな生き物なんだろう?」
そんな疑問を持ってくれたあなたに向けて、この記事を書かせていただきました。
この記事では、しじみ漁師の嶋田漁業部が、しじみの生態を中心にしじみについてのお話しを詰め込んでいます。
しじみの年齢や食事、繁殖から地理的分布、水質浄化作用から漁業まで、これを読めばしじみの現状がわかる内容になっています。
専門的な言葉は可能な限り噛み砕いて説明していますので、ぜひ参考にしてください!
それでは早速みていきましょう。
目次
日本には3種類のしじみがいる
ヤマトしじみ | セタしじみ | マシジミ | |
---|---|---|---|
生息域 | 汽水湖 | 琵琶湖 | 淡水(小川や水田) |
殻の光沢 | 強い | 弱い | 強い |
殻の内側 | 白紫 | 紫 | 濃紫 |
現状 | 市場で見かける99%以上がヤマトしじみ | 琵琶湖にしかおらず激減 | 絶滅危惧種に指定されている |
日本には大きく3種類のしじみがいます。淡水に棲む「マシジミ」、琵琶湖にしかいない「セタしじみ」、そして汽水湖に棲む「ヤマトしじみ」です。
市場に出回るのは99%以上がヤマトしじみであるため、今回はヤマトしじみを中心に生態を見ていきましょう。
ヤマトしじみの生態
まずはざっくりとヤマトしじみの生態についてお話ししていきます。
ヤマトしじみの概要
まずはざっくりとヤマトしじみについてお話ししましょう。
ヤマトしじみは軟体部と、硬い2枚の殻でできています。小さな軟体部の中に心臓や胃、腸などがあり、雄と雌がいる雌雄異体で、無脊椎動物になります。
呼吸は入水管から水を吸い込み、水に含まれる酸素(溶存酸素)をエラ組織で取り込むことにより呼吸しています。
繁殖は体外受精で行われ、水中で餌(有機
しじみの年齢
ヤマトしじみの貝殻には、輪脈と呼ばれる線(段差)があります。冬を一回越すごとに一本増えることでしじみの年齢を数えることができます。寿命はおおよそ10年程度と言われていますが、まだまだ研究中の分野で、専門家たちが解明を進めています。
ヤマトしじみの食事
ヤマトしじみは、食事をするとき、水中に浮遊する混濁物(こんだくぶつ)を一旦無差別に取り込みます。そして、エラでろ過し、必要な物のみを餌とするんです。
ろ過された有機物は、口、胃腸、肛門の順番で移動し、出水管から糞として外へ排出されます。(このような生物をろ過食者と言います)
では、しじみの栄養となる餌はどのような物なのでしょうか?実は、まだはっきりとわかっていないんです。
しかし、最近の研究により、植物プランクトンや底生微細藻類、陸上の植物を起源とする有機物を栄養源としていることがわかりました。
しじみの繁殖~しじみがどう生まれるか
しじみにはオス、メスの性別があり、魚と同じように卵からかえります。しかし、しじみが生まれるにはいくつかの条件があります。例えば、「水温が25℃以上であること」、「卵の中と外の水の浸透圧がほぼ等しい(塩分濃度がある一定の間)」など。
シジミの受精卵や稚貝になるまでの幼生は、0.1mm以下という人間の目では見ることができないほど小さいサイズです。しかし、生物としてしっかりと発生するため過程を見ていきましょう。
成熟過程
成熟過程 | 状態 |
---|---|
休止期 | 冬の間は産卵を行わず休止する |
成長前期 | 季節は春頃で、生殖細胞が出来始める時期 |
成長後期 | 成長し夏に差し掛かる頃、生殖細胞が増える |
成熟期 | 成熟し身が詰まっており、最も美味しい時期 |
放出期 | 産卵期で、生殖活動を行う |
放出終了期 | 放出終了後は再び休止期へ |
受精後の発生
受精後の時間 | 状態 |
---|---|
10分 | 卵割の開始 |
3時間 | 肺表面に繊毛が形成、遊泳を行うようになる |
6時間 | トロコフォア幼生になる |
9時間 | ベリジャー幼生になる |
5日 | ベリジャー幼生後期〜稚貝へ |
2〜3週間 | 成貝と同じ殻形に成長 |
- トコロフォア幼生:第一の浮遊幼生期で、形はやや縦型、体の回転運動が頻繁になる時期です。
- ベリジャー幼生:第二の浮遊幼生期であり、トロコフォア幼生に比べ期間が長いです。初期は殻が不完全で、「D」の形をしています。そのため、この時期の幼生は「D型幼生」と呼ばれています。繊毛のある部分は面盤に分化し、遊泳を行います。
余談ですが、ヤマトしじみの雌は、一年の産卵で約30万〜90万個の卵を放出すると考えられています。放卵は通常30分から1時間と言われていますが、時には数時間かかることもあるようです。また、卵は放出直後は細く、糸状なのですが、約30分で球体となり、完全な成熟卵となります。
しじみと環境の話
しじみと環境についても触れておきましょう。地理的分布と湖の環境への影響についてお話しします。
ヤマトしじみは主に汽水湖に生息している(地理的分布)
汽水湖とは、淡水と海水が混じり合った水(気水域)がある湖のことです。風や潮汐(ちょうせき)の影響を受けやすく、環境の変化が激しい場所ですが、ヤマトしじみは汽水湖の環境に適応して生きています。
汽水湖は水深が浅く広い水域です。つまり、太陽エネルギーの恩恵を受けやすく、植物プランクトンが大量発生する場所。植物プランクトンを餌とする魚類や貝類にしてみれば、まさに天国です。
代表的な日本の汽水湖は以下の通り。
宍道 湖小笠原 湖網走 湖
ヤマトしじみは、汽水湖以外でも河川の感潮域にも生息しており、北海道から九州まで幅広く存在が確認されています。
ヤマトしじみは湖を綺麗にしている
しじみが存在するだけで、その湖はキレイになるんです。これは、しじみの食事風景に秘密が隠されていました。
しじみは餌を食べる時、入水管と言われる部分から湖の水を飲み込みます。そして、エラで不要な物を取り除いて栄養にし、キレイになった水を湖に戻します。
「日本シジミ研究所」が行った実験によると、しじみは1時間あたり0.17Lの水をろ過していたとのことです。
宍戸湖であれば約31000トンのしじみが存在しており、しじみ全体によるろ過量は1時間あたり約52億Lになります。宍戸湖の水量は3600億Lなので、湖全体の水を約3日でろ過できる計算になります。
しじみ漁による水質浄化
しじみ漁は、湖内の窒素循環において重要な役割を持っています。
宍道湖のヤマトしじみは、1日に全体で約22トンの窒素を取り込み、水中の窒素同化産物として約133トンの窒素を体内にストックしていることがわかりました。
湖の中にある栄養塩(窒素やリンを含んだ塩)を除去するための現実的な方法がほぼ無い現在では、しじみ漁によって窒素とリンを湖外へと持ち出している現状です。
栄養塩と聞くと一見良いものに聞こえるかもしれませんが、増えすぎると湖の酸素不足を招くキッカケになります。
次はしじみ漁業についてお話ししましょう。
しじみ漁業
ここでは、しじみ漁業の特性と、現状及び課題についてお話しします。
しじみ漁業の特性
しじみ漁業は
漁の方法としては、「入り掻き」「手掻き」「機械掻き」などがあり、ジョレンという物を使用した漁法になります。網走湖では全国的にも珍しい「プロペラ」を使用した漁法を行っています。
しじみ漁業の現状と課題
昔に比べ、しじみの総量はかなり減りました。危機感を持ったしじみ漁師たちはしじみを獲る際のサイズや時間に制限を設け、しじみの生息と環境のバランスを崩さないよう工夫して漁を行っています。
湖に遊びに行った際には、少しだけしじみと環境のことを思い出していただけると嬉しいです。
独自調査によってわかった「網走湖のしじみ」の魅力
嶋田漁業部では、網走湖のしじみについて「成分分析ブランディング」さんに依頼し、調査を行いました。
網走湖のしじみと中国産の輸入しじみを比較すると、以下のことが判明。(エイプリルの方が網走湖のしじみです)
一粒あたりのコハク酸含有量(うま味成分)が最大9.36倍多い
一粒あたりの可食部重量が最大4.94倍多い
つまり、網走湖のしじみはうま味成分が多く、一粒あたりが大きいしじみなんです。特に8月のしじみは産卵前ということもあり、うま味成分と大きさがピカイチ。
八月のしじみ粥
「なんとかこの美味しいしじみを世の中の人に届けられないか…」そう思った嶋田は、「八月のしじみ粥」というものを作ってみました。試行錯誤してプリップリのしじみと、うま味エキスが染み込んだお粥を両方楽しめるようにした自信作ですので、良ければ専用ページをご覧ください!
八月のしじみ粥をみてみる現在、「北こぶし知床 ホテル&リゾート」さんでも「八月のしじみ粥」を置いていただいています!「HOKKAIDO LOVE!割」対応のホテルなので、今ならお得に泊まれますよ♪
実は僕、サウナ大好きで北こぶし知床 ホテル&リゾートさんによく通っていたことがキッカケなんです(笑)
まとめ
今回はヤマトしじみの生態を中心として、しじみの現状についてお話しさせていただきました。しじみ漁師として少しでも現場の知識をお伝えできたなら幸いです。
最後にポイントを振り返りましょう。
- 日本には大きく「ヤマトしじみ」「セタしじみ」「マシジミ」がいる
- 市場に出回る99%以上はヤマトしじみ
- しじみは雌雄異体の無脊椎動物で、体外受精により繁殖する
- しじみは汽水域に生息しており、汽水湖に多い
- しじみの食事や漁業により湖を綺麗にすることができる
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